近年、家と駐車スペースが一体化した「ビルトインガレージ」が注目を集めています。住まいの空間に駐車スペースを取り込むことで、限られた土地を有効活用できる点が魅力です。
しかし、ビルトインガレージにはメリットだけでなく、デメリットも存在します。導入を検討する前に、しっかりと特徴を理解することが重要です。
この記事では家づくりのプロが、事例を交えて、ビルトインガレージのメリットとデメリット、費用相場を詳しくご紹介します。ぜひご覧ください。
- ビルトインガレージの設置が適しているケース【メリットを享受できる】
- 狭小地に家を建てたい
- 愛車を大切に保管したい
- 趣味のスペースを確保したい
- 車の乗り降りの動線を楽にしたい
- 降雪地域で車の雪下ろしをしたくない
- ビルトインガレージがある間取り事例5選
- 中庭とつながるビルトインガレージがある和モダンな住宅
- シャッター付きのビルトインガレージで安心の住宅
- ビルトインガレージ内にラウンジがある住宅
- ビルトインガレージと屋根なしの駐車スペースを併用した住宅
- 敷地面積に対して豊富な延床面積を実現したビルトインガレージのある住宅
- ビルトインガレージの費用目安
- ビルトインガレージのデメリット
- 1階部分の居住面積が減る
- ガレージに接する部屋は音や振動が気になる可能性がある
- 建築コストが高くなる
- 固定資産税がかかる
- 設置箇所によっては居住部分の窓が減る
- ビルトインガレージを作る際のポイント
- 将来的な車の買い替えを考慮する
- 収納スペースを作る
- スムーズな動線を考える
- 価値とコストを比較する
- 居住部分の採光を考える
- まとめ
ビルトインガレージの設置が適しているケース【メリットを享受できる】
「インナーガレージ」とも呼ばれるビルトインガレージ。設置することで、単なる駐車スペースを超えた、暮らしの可能性が広がります。ここではビルトインガレージを設置するメリットを紹介します。
狭小地に家を建てたい
土地が限られる都心部では特に、マイホームと駐車スペースの両方を確保することが困難なケースがあります。
しかし、そんな悩みを解決してくれるのが「ビルトインガレージ」です。1階を駐車スペースとし、2階~3階を居住スペースにすることで、狭小地であっても駐車スペースを確保しやすくなります。
住まいに駐車スペースを一体化することで、限られた土地を有効活用しながら理想の暮らしが実現できます。
愛車を大切に保管したい
車やバイク愛好家にとって、愛車は単なる移動手段ではなく、かけがえのない宝物です。しかし、屋外駐車場に駐車していると、雨風や雪、紫外線による劣化のリスクがあります。
一方、ビルトインガレージがあれば、愛車を安全・快適に保管できます。
ビルトインガレージのシャッターに加え、センサーライトや防犯カメラを設置すれば、セキュリティの強化が可能です。
趣味のスペースを確保したい
ビルトインガレージは、単なる駐車スペースではありません。車のメンテナンススペースや趣味のワークスペース、子供の遊び場など、様々な用途に活用できます。愛車を守りながら、ライフスタイルを豊かに彩る空間を創り出せます。
例えばゴルフ好きの方には、パッティングやショットの練習場として最適です。広々としたスペースがあれば、シミュレーションゴルフを設置して楽しむこともできます。
DIY愛好家の方には、広々とした作業場として活用可能。工具や木材を整理整頓して収納し、集中して作品作りに没頭できます。
車の乗り降りの動線を楽にしたい
ビルトインガレージは、家屋の中に駐車スペースを設けるため、雨風、雪の日でも快適に車に乗り降りできるのが魅力です。
家とガレージが一体化しているため、濡れたり汚れたりすることなくスムーズに出発できます。特に、毎日のように車を利用する方にとっては、このメリットは大きいでしょう。
ガレージに勝手口を設置すれば、買い物帰りに荷物を運んだり、雨の日でも濡れずに室内へ出入りができます。2階にLDKを配置するような間取りの場合、ガレージと勝手口を近付けると、より効率的な動線を確保できます。
降雪地域で車の雪下ろしをしたくない
雪国にお住まいの方にとって、冬の最大の悩みは雪かきではないでしょうか。車に積もった雪を下ろす手間は、極力避けたいですよね。
ビルトインガレージがあれば、そのような悩みから解放されます。
車の雪下ろしの手間を減らし、スムーズに出かけたい方はビルトインガレージを検討しましょう。
ビルトインガレージがある間取り事例5選
ここでは、ステーツが建築した、ビルトインガレージがある間取り事例を紹介します。
中庭とつながるビルトインガレージがある和モダンな住宅
家族構成:夫婦+子供2人
敷地面積:58.91坪
ガレージの広さ:7.52坪
このインナーガレージハウスは、和モダンの外観と開放的な空間が特徴です。施主様のご要望により、一戸建てと一体化したガレージを設計しました。
ガレージは完全に囲われておらず、中庭にほど良い目隠しをしつつ、玄関から中庭へのアクセスも容易になっています。
ガレージから玄関に入れるように設計されています。玄関の扉の横に外部収納スペースもあります。
車庫から中庭へのつながりがあり、その先にはウッドデッキとリビングがあります。庭とつながっているので、子供の遊び場としても活用できます。
シャッター付きのビルトインガレージで安心の住宅
家族構成:夫婦+子供2人
敷地面積:54.59坪
ガレージの広さ:9.58坪
この家は、シャッター付きのインナーガレージハウスです。2台分の駐車スペースを確保しつつ、ガレージから室内への動線を2つ設け、帰宅動線を効率化しました。
1.玄関動線::ガレージからシューズクロークを経由して玄関へ入る動線です。来客用とは別に、家族専用の動線を確保できます。
2.キッチン直通動線::買い物帰りに便利な、ガレージからキッチンへ直接入れる動線です。荷物の運搬が楽になり、帰宅動線を短縮できます。
ガレージ内には外部収納を設置。ゴルフバッグやアウトドア用品など、外で使うものを収納できます。
電動オーバースライダー方式のシャッターで意匠性が高く、開閉音が静か。巻き取り式のシャッターは手動タイプもあるので、使い方や予算で選ぶことも可能です。
ビルトインガレージ内にラウンジがある住宅
家族構成:夫婦+子供2人
敷地面積:79.52坪
ガレージの広さ:14.69坪
この事例は、おうち時間を楽しめる趣味と実用性を備えた3階建てインナーガレージハウスです。雪国にお住まいの施主様のご要望に合わせて、ガレージ、ラウンジ、ピロティ、玄関、エレベーターなど、様々な機能を備えた住まいを実現しました。
2台分の駐車スペースを確保しつつ、限られた敷地面積を有効活用するために縦列駐車を採用しました。
車庫スペース横に土間のラウンジスペースを設置。冬場も屋内で過ごせる空間として、雪かき道具なども収納できます。
ラウンジスペースの反対側にはピロティ空間を設け、使用頻度が低い物やディスプレイスペースとして活用できます。給湯器も設置し、雪対策にも役立てています。
ビルトインガレージと屋根なしの駐車スペースを併用した住宅
家族構成:夫婦+子供2人
敷地面積:45.40坪
ガレージの広さ:5.01坪
この事例は、限られた敷地面積で1台分のインナーガレージと2台分の屋根なし駐車スペースを設けたガレージハウスです。施主様のご要望により、奥様が普段使う車をインナーガレージに駐車できるように設計されています。
駐車スペースを1台分にすることで、ゆとりのあるLDKとお風呂などの水回りを1階に配置することができました。
車庫スペースは完全に仕切らず、建物と一体化した屋根付きのアプローチとして設計。背面に出入り口も開け、採光と風通しを確保。車を守りながら快適なガレージを実現しています。
敷地面積に対して豊富な延床面積を実現したビルトインガレージのある住宅
46.81坪の敷地面積に、49.51坪もの延床面積とインナーガレージを実現した事例です。
3階建てにすることで、限られた土地面積を有効活用し、49坪もの延床面積を確保。玄関近くにインナーガレージを配置しているため、雨や風から車を守り、趣味の空間としても活用できます。
シューズクロークや収納も完備しているので、日常の小物や季節の衣類をすっきり収納できます。
ビルトインガレージの費用目安
ビルトインガレージの建築費用は、坪単価で50万〜70万円が一般的な目安です。車の収容台数によって、必要な坪数が変わるため、費用の相場は以下となります。
・車1台分(5坪): 240万〜350万円
・車2台分(10坪): 480万〜700万円
上記費用は、ビルトインガレージ部分のみにかかる建築費用であり、ガレージ以外の家本体部分の費用は含まれていません。
例えば、4,000万円で家全体を建てるとした場合、車1台分のビルトインガレージを設置すると、トータル費用は4,250万〜4,400万円になります。
実際の費用は、以下の要素によって変動します。
・坪数
・設備
・建物の構造( 鉄筋コンクリート造や木造など)
ビルトインガレージは、魅力的ですが、費用面もしっかりと検討する必要があります。費用目安を参考に、自分に合ったビルトインガレージを計画しましょう。
ビルトインガレージのデメリット
ビルトインガレージの間取りには当然ながら、メリットだけでなくデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか、紹介します。
1階部分の居住面積が減る
ビルトインガレージは1階部分に駐車スペースを設けるため、必然的にリビング、ダイニング、キッチンなどの居住スペースが減る、またはまたは敷地面積が必要になります。
特に、敷地面積が限られている場合は、1階全体をガレージにするケースもあり、間取りの自由度が大きく制限される可能性に注意しましょう。
ビルトインガレージのデメリットを補うには、1階をガレージにする代わりに、2階にリビングを設けるといった方法があります。
最適な間取りや設計方法は施主様のニーズによって異なります。ビルトインガレージの施工実績豊富なハウスメーカーに相談しましょう。
ガレージに接する部屋は音や振動が気になる可能性がある
ビルトインガレージは家の中に車庫があるようなものなので、車の出入りの音やエンジン音、シャッターの開閉音などが室内に伝わることがあります。
特に、寝室がガレージの近くにある場合は、早朝や深夜の車の出入りで睡眠を妨げられることも。家族で生活時間が異なる場合は注意が必要です。
対処法にはガレージの真上や隣に寝室や子供部屋を配置しない、ガレージと住居部分の間に廊下や収納スペースなど緩衝帯を設け、音や振動を伝わりにくくするなどがあります。
建築コストが高くなる
ビルトインガレージは、車の出し入れをするために、1階部分に大きな入り口の確保が必要です。特に2台分の駐車スペースを確保したビルトインガレージを木造建築で作りたい場合、耐震面が懸念されます。
耐震補強には、周りに窓のない壁を多く配置する必要があります。また、壁や梁を増設したり、金物で補強したりすると、その分費用がかさみます。
ビルトインガレージの建築コストを抑える方法はいくつかあります。例えば駐車台数を1台にすることも解決策の一つです。必要な入り口を小さくでき、耐震性の高い構造を採用する必要がなくなります。
固定資産税がかかる
ガレージの種類は様々ですが、固定資産税の課税対象となるかどうかは、ガレージのタイプによって異なります。
固定資産税が課税されるガレージは、「外気分断性」「定着性」「用途性」の3つの要件をすべて満たしているガレージです。
・外気分断性::建物の外部と内部を区別できる構造であること
・定着性::地面に固定されていること
・用途性::車庫として利用されていること
これらの要件をすべて満たしているガレージは、固定資産税の課税対象となります。
ビルトインガレージは、上記3つの要件をすべて満たしているため、固定資産税の課税対象となります。そのため、固定資産税を抑えたい方にはデメリットです。
しかし、ビルトインガレージには、容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)の緩和を受けられるメリットがあります。具体的には、延床面積に対して5分の1までの広さであれば、床面積に含まれません。つまり、限られた敷地面積でも、広めのガレージの確保が可能です。
なお、ビルトインガレージに電動シャッターを設置する場合には注意が必要です。電動シャッターは、固定資産税評価額の加算評点項目に含まれるため、固定資産税がかかる可能性があります。
ガレージの種類と固定資産税の関係は複雑な場合もあり、ご自身で判断するのは難しい場合があります。固定資産税について不安な点がある場合は、ハウスメーカーの担当者や専門家に相談することをおすすめします。
設置箇所によっては居住部分の窓が減る
ビルトインガレージを1階部分に設置すると、必然的にガレージスペースの壁が増え、窓を設置できる場所が減ります。
そのため、ビルトインガレージを導入する場合は、設置箇所を工夫しましょう。
例えば、壁面に設置する窓だけでなく、ハイサイド窓や天窓を設置すると、窓面積を増やせます。
ビルトインガレージを作る際のポイント
ビルトインガレージの間取りを考える際、何に着目したら良いのでしょうか。ここでは特に大切なポイントを紹介します。
将来的な車の買い替えを考慮する
ビルトインガレージを設置後、車の買い替えで困ってしまうケースがあります。
ビルトインガレージは建物と一体的に整備するため、後から建物のサイズを変更することは非常に困難だからです。
例えば、将来的にミニバンやSUVなど大型車に乗り換える可能性がある場合は、それに対応できる十分な広さのガレージを確保する必要があります。特に、海外メーカーの車種は、日本メーカーの車種よりも一回り大きい場合が多いため、注意が必要です。
新築時に乗っている車種だけでなく、将来乗り換えたい車種もしっかりと考慮してサイズを決めましょう。
収納スペースを作る
ビルトインガレージは、車を雨風や盗難から守るだけでなく、様々なものを収納できる便利なスペースです。
例えば、室内に持ち込みたくないゴルフバッグやキャンプ用品、季節用品などの収納に最適です。屋外に置くよりも汚れから守ることができ、管理も簡単になります。
また、雪国にお住まいの方であれば、雪かき道具やスノーボードなどの冬用具を収納するのにも便利です。スペースを有効活用することで、玄関やリビングをスッキリと保てます。
ビルトインガレージに収納スペースを設ける際には収納したい物の量を把握し、それに合った広さのスペースを確保しましょう。
スムーズな動線を考える
ビルトインガレージを設置しても、動線がうまく考えられていないと、かえって使いにくくなります。
ビルトインガレージを有効活用するためには、実際の行動をシミュレーションして、スムーズな動線を考えることが重要です。
例えば、買い物から帰ってきた場合は車から荷物を降ろし、玄関を通ってキッチンやリビングへ運ぶまでの動線を考えてみましょう。車を降りてから玄関までの動線だけでなく、車の乗り降りや荷物の出し入れもスムーズに行えるよう、車のドアの開閉スペースや荷物の積み下ろしスペースなどの検討も大切です。
価値とコストを比較する
ビルトインガレージの設置にはコストがかかります。導入前に、導入するべきかどうか、家づくりの優先順位を検討することが重要です。
ビルトインガレージの価値は、人によって異なります。例えば車の愛好家にとっては、車は大切な宝物であり、雨風や盗難から守りたいという気持ちは強いでしょう。
一方で、車を単なる移動手段と捉えている人にとっては、ビルトインガレージの価値はそれほど高くないかもしれません。
ビルトインガレージを導入するかどうか、価値とコストを天秤にかけ、自分にとってどちらが大きいかを判断することが重要です。専門家のアドバイスも参考にしながら、後悔のない選択をしましょう。
居住部分の採光を考える
ビルトインガレージが居住部分の壁に隣接する場合は、居住部分の窓が減るので採光が減る場合があります。従って、居住部分の採光や通風を確保することが重要です。
ビルトインガレージは1階スペースがガレージで占められるため、居住部分は必然的に2階以上に設けられます。2階以上であれば、高層階からの採光や通風を確保しやすく、明るく開放的な住空間を実現できるでしょう。
2階リビング以外にも、天窓や吹き抜けを設けると、さらに採光を確保できます。
まとめ
ビルトインガレージを取り入れた間取りを作る際には、ご自身やご家族にとっての優先順位を考慮することが大切です。費用や間取り、設備、法規制など、様々な点に注意してビルトインガレージを計画しましょう。
納得いく家づくりを進めるには、ビルトインガレージのメリットを理解するだけでは不十分です。この記事で紹介したデメリットや作る際のポイントを理解し、色々な側面から導入を検討しましょう。
ステーツではプランナーがご家族一人ひとりのお気持ちに寄り添って、理想のビルトインガレージの間取りをご提案いたします。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。